最近、野球選手の契約更改のニュースなどを見ていると、インセンティブ契約という言葉をよく耳にします。インセンティブという言葉は昔から使われていますが、ここ数年よく耳にするようになりました。さて、そのインセンティブとは一体どのようなものなのでしょうか。
インセンティブとは、正確な意味としては「奨励」「刺激」「褒賞」といったところになりますが、インセンティブ契約とは誤解を恐れずに言ってしまうと「出来高払い契約」ということになります。野球選手における出来高払いというのは、成績がいいほど給料をたくさん払うよ、という感じです。インセンティブ契約は他にも携帯電話業界で行われていますが、これも野球選手と似たようなもので、携帯電話を売れば売った分だけお金を払うよ、という感じになっています。以後、スポーツ界におけるインセンティブ契約と携帯電話業界におけるインセンティブ契約の2つに分けてみていくことにします。
スポーツ界におけるインセンティブ契約は大概単純なものです。例えば野球選手ならば
・バッターなら打率一定以上、打点一定以上、ホームラン一定以上でボーナス何千万円
・ピッチャーなら勝数いくつ以上、防御率いくつ以下、セーブいくつ以上でボーナス何千万円
といったものです。サッカー選手も似たようなものがあるようで
・ゴールいくつ以上でボーナス何千万円
といったインセンティブ契約があるようです。野球選手の場合、外国人選手に対してはインセンティブ契約が昔から採用されていましたが、日本においてはまだ最近始まったばかりです。
インセンティブ契約は、働き具合に応じて支払われることになるため、選手側は成績を少しでも上げようとよりいいプレーをする意欲につながります。経営者側から見ても、活躍度合いによって給料を支払えばいい契約なので、成績が出なかった選手に対しては無駄な給料を支払わなくてすむというメリットがあります。元々、野球選手の年俸というのは、前年度の働きに対しての評価で決まるので、ある年活躍したからといって翌年も活躍するとは限らず、でも給料は去年の実績があるからたくさん払わなければならないという理不尽なことが平然とまかり通っていました。インセンティブ契約を結ぶことによって、多少なりとも正確な年俸に適応されるということもあります。
インセンティブ契約を結ぶ選手は、そのほとんどが実績のある選手ばかりです。元々の基本年俸が高い選手が多いのです。インセンティブ契約を結んだ場合、基本年俸は多少なりとも下がることが多いのですが、インセンティブ契約事項全てを達成した場合は不当に高額な給料になってしまう契約を結んでいる選手もいます。勿論、選手と経営者側との間の契約ですからそれはそれでいいのですが、結果として選手の総額年俸高騰化につながりかねません。こうなってしまうと、チーム経営にお金をかけられない、もしくはかけたくないチームは有力選手を放出せざるを得なくなり、それだけの給料を払えるチームのみに選手が集まってしまうという問題が起こります。また、一部高額年俸選手が存在しているために、他の選手たちの年俸が下がっていってしまい、チーム運営自体に影響を及ぼす可能性も懸念されます。
このように、スポーツ界におけるインセンティブ契約は表裏一体の部分があり、インセンティブ契約が吉と出るか凶と出るかはいまだ不透明です。今はインセンティブ契約を結ぶ選手が増えていますから、今後スポーツ界がこれによりどうなっていくのか注目したいところです。
携帯電話業界におけるインセンティブ契約は、携帯電話会社と携帯電話販売店の間で結ばれています。冒頭でも書きましたが、携帯電話を販売したら、その台数に応じて報奨金を支払うというものです。携帯電話が普及した一因として、このインセンティブ制度があったからだという指摘も多いです。
このインセンティブ制度は、携帯電話を新規契約したときにのみ支払われます。結構前から携帯電話を使っている人なら、携帯電話新規契約ならタダだけど、機種変更の場合は数万円かかるというのを見たことがあるでしょう。これは、新規契約者に携帯電話本体をタダで配っても、インセンティブ契約でお金が携帯電話会社から入ってくるからです。さらに、このインセンティブ契約では、100台売ったらプラスいくらのボーナスなどという契約も含まれていたようで、だからどこもかしこもタダとか1円とかで配れたわけです。
・携帯電話会社は携帯電話を持つ人間が増えることにより、通話料金などの収益が増える
・携帯電話販売店では売れれば売れただけ携帯電話会社から収入が得られる
・使用者側は破格の値段で携帯電話を所有することができる
と、いいことずくめです。
直前に、このインセンティブ契約は誰にとってもいいものだと書きましたが、これはこのインセンティブ制度がまともに機能していればの話です。どこかが1ヶ所でも狂うと、このインセンティブ制度は破綻します。そして、このインセンティブ制度は徐々に機能しなくなっています。理由は携帯電話の普及率にあります。今や日本の携帯電話普及率は90%に達しようとしており、これはもう既に新規契約者が見込めなくなりつつあることを示しています。こうなると、携帯電話を安くしてばら撒くメリットはなくなり、むしろ安くばら撒くと損するという性質のものになってしまいます。現に新規契約者は減少しており、携帯電話会社はこのインセンティブ契約自体を見直そうといった動きもあります。
スポーツの分野ではこれからの動向が注目されるインセンティブ制度ですが、携帯電話業界では既に行き詰っており、新たな方向性を見出さなければならなくなったというのも面白いところです。スポーツ界が遅れているのでしょうか、それとも携帯電話業界が先を行き過ぎているのでしょうか・・・。
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